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【のれんをくぐって】 山中油店(1) 新しいことへの興味と挑戦が、創業200年の歴史と伝統に
 長い歴史と豊かな文化を誇る京都には、それを支えた店がある。京都に暮らす人々の生活に密着し、なくてはならない存在となったそれらは、やがて“老舗”と呼ばれるようになり、店そのものが京都の伝統と文化を表すものとなった。しかし、その伝統と文化が逆に敷居の高さとなり、最近京都に住むようになった者には馴染みの薄い存在にもなっている。この連載では、そんな敷居の高さを感じさせない、誰でも気軽にのれんをくぐれる、そんな“老舗”の素顔に迫ってみる。


 ◇老舗は新し物好き

▲安政2(1855)年に建てられた山中油店店舗

 京都市上京区下立売通智恵光院。このあたりは794年の平安建都当時に内裏があった場所である。内裏は火災や戦乱の影響でたびたび場所を移した後、南北朝期に現在の京都御所の場所へと落ち着いたが、平安宮内裏内郭回廊跡に、全盛時の面影をしのぶことができる。それと同時に、近年その数を減らす一方の京都らしい町家の風景も、この近辺では十分に見ることが可能だ。1200年前の都の跡地と、その上に出来た京都らしい町並み。今も我々の心を癒してくれる場所である。

 そんな町並みの一画、下立売通に面して店を構えるのが、文政年間(1818~1829)創業の老舗「山中油店」だ。べんがら格子に瓦葺の屋根、「食用油」とだけ記された看板。その外観は目立つものではないが、存在感は通るものを振り返させる。店先には「胡麻油」や「なたね油」といったお馴染みの食用油のほか、建築・工芸用の「亜麻仁油」や「荏油」など、様々な油が並べられていて壮観だ。
▲蛤御門の変(元治1・1864年)の際、長州藩士たちによってつけられたと伝わる刀痕
 お話を伺った常務取締役の浅原孝さんが、入り口横の柱を指差した。

「ここに傷があるでしょう。これは、刀でつけられたものなんですよ。店から東へ進むと御所に出るのですが、幕末の『蛤御門の変』の時、撤退する長州藩士たちによってつけられた刀傷だ、と伝わっています」

 ふとしたところに日本史の重要事件の痕跡がある。そんな歴史を持つ店を、21世紀の今も続けていく上の秘訣とはなんであろうか。

「老舗と言うと、歴史や伝統という言葉が思い浮かびますよね。もちろんそれは大事だし、守っていくべきものですが、それと同時に老舗と呼ばれる店の人間は、新し物好きなんですよ」

 老舗は新し物好き。多少の違和感を覚える言葉である。

「うちは約200年、油一筋で商売させてもらってます。では、どうして200年も続けられたのか。それは200年前に確立した商売形態が完璧だったからではありません。次々と新しいものに興味を示し、歴史や伝統を重んじながらも、その時代のニーズに合うように商売のやり方や取り扱う商品を変えていったからです」

 言われてみれば至極当然のことだ。山中油店のような200年続く老舗でなく、例えば10年前に出来た新しい会社でも、10年前と同じことをしていたら、その会社に未来はない。老舗が老舗となったのは、長きにわたる経験をもとに、次々に新しいことに挑戦し、時代をリードする商売に取り組んだ結果なのだ。

「うちが商売を始めたころ、油と言えば明かりをともす燈明油のことでした。『油断大敵』という言葉がありますが、これは油を切らすことがいかに危険なことだったかを示しています。つまり、それくらい油は日常必需品で大切なものでした。しかし、明治になって夜を照らすものがガスになり電気になり、燈明としての油の需要は減っていきます。その代わり、西洋の食文化が一般に浸透していき、今度は食用油の需要が増えていきました」

▲店の東端にある平安京一本御所跡の碑。かつてこのあたりは平安京の内裏だった
 当時の帳簿を調べると、そうした変遷がわかるという。その後、昭和に入って終戦を迎えると、大手メーカーが食用油の大量生産を開始し、スーパーマーケットという新しい小売形態が確立したことで、終戦直後には京都だけで200店近くあった油を扱う店は次々になくなっていった。そうした時代の流れを敏感に察知し、どうすれば生き残っていけるかを模索し続けた結果が、200年という伝統を持つ老舗を作ったのだ。

「最近で言えばインターネットを使った通信販売ですね。あれは顔こそ会わせませんが、互いに言葉を交わして売り買いをするという、昔ながらの商売に通じるものがありますよ」

 そうした中で、今まで培ってきた伝統、重ねてきた歴史を後世に伝えていくことも、老舗としての責務だと浅原さんは言う。

「5年前に店の向かいの町家に『京・町家文化館』を開いたのも、その一環ですね。月に一度、同志社女子大学と共催して『京都の歴史と文化』をテーマに講演会を行っています。また、この町家を3月2日以降の金曜、土曜、日曜に、『上京歴史探訪館』として平安京をはじめとする上京の歴史、文化を紹介する場所としてお使いいただくことになっていますので、お気軽にお越しください」

(つづく)

山中油店
京都市上京区下立売通智恵光院西入508
電話:075-841-8537
営業時間:8時30分~17時 日、祝、第2・4土曜日定休
ホームページ:http://www.yoil.co.jp/
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