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【のれんをくぐって】 山中油店(2) 日本の木造建築を支えてきた“油”
 ◇家は建てたときが一番きれいなのではない

▲山中油店から北西方向に歩いて2分ほどの場所にあるカフェ「綾綺殿」。元は米屋だった築100年の町家を改修している。店名はかつてこの地にあった平安宮内裏の綾綺殿(紫宸殿の北東部に位置し各種儀礼を行った場所)から

 山中油店の店舗が建てられたのは安政2(1855)年。つまり築150年以上を経ている。訪れる者はそのたたずまいに京都らしさ、日本らしさを感じて楽しむが、いざ住んでみると苦労も多いようだ。

「瓦1枚取り替えるにも、江戸時代の瓦と現代の瓦はサイズが違いますので、古い瓦を探すのに大変骨が折れます。また、古い蔵の壁が落ちたりしますと、その修理にも大変な時間とお金がかかってしまいます」
 お話を伺っていた、山中油店から駐車場を挟んだ北西にあるカフェ「綾綺殿(りょうきでん)」も、元はお米屋さんだった築100年の町家を改修したものだ。その建物にも油は使われている。

「日本の木造建築が何百年も残り続けられるのも、油のおかげなんです。木に油を塗ることで防水性を高めたり、防腐、防虫効果を上げることができると言われています。また、ペンキなどと違って通気性を保てるため、木を長持ちさせることもできるんです」

▲笑顔で町家と老舗について話してくれた山中油店常務取締役・浅原孝さん
 「綾綺殿」の改修は、そうした昔ながらの工法で行われた。

「酸化鉄を原料とした紅殻(べんがら)や柿渋、それに荏胡麻(えごま)油など、いわゆる自然塗料を使って改修しています。京都の町家の代名詞とも言える『べんがら格子』がそう呼ばれるのは、こうしたやり方で塗装をしているからです」

 あの独特の赤みを帯びた町家の色を出すのにも、油が活躍していたのである。

「ただ、昔は当たり前のように行われていた油を使った塗装技術も、ペンキ文化の流入でほとんど失われておりました。しかし、近年の町家の再生ブームや、シックハウス問題への対策として、この技術が見直されてきており、塗装屋さんや建築家の方から毎日のように問い合わせがあります」

木が長持ちし、シックハウスの心配もいらない。良いことづくめの油による自然塗装だが、もちろんそんなに簡単なものではない。その塗り方、また塗った後のお手入れ、これが肝心なのだ。

▲綾綺殿の中の「おくどさん」。これで沸かした湯で淹れたコーヒーは独特の澄んだ風味がある
「塗り方は決して難しくありません。正しい材料を使い、手順を守っていただけば、素人にも十分できますし、乾くのにもそれほど時間はかかりません。ただ、本当の自然塗装の美しさを出すには、乾いてから後のお手入れが大切です。塗った木は、毎日からぶきすることで、なんともいえない独特の深い色つやが出るんです。それも1年2年ではなく、何十年とかけて美しくなっていく。今は、家は建てたときが一番きれいだというのが当たり前になっていますが、そうではないんですね。建ててから自分たちの手できれいにしていくのが家なんです。だからこそ、愛着も沸くんです」

 家を大事にする気持ちとは、すなわち「物を大事にする気持ち」だ。最近はそうした気持ちを持つことが減っているが、「綾綺殿」では今も古い物が大切に使われている。コーヒーを淹れる湯を沸かすのは「おくどさん」だし、雑誌の入った本棚は昔お米屋さんだった頃に何十年も使われていた米びつを再利用したものだ。

「修学旅行でやって来た子供たちの反応が面白いですね。彼らは町家の雰囲気を『かっこいい』と表現するんですよ。それが的確な表現かどうかはわかりませんが、彼らが町家から何かを感じ取り、それがいいものだと思っているのは確かです」

▲店頭に並べられている建築・工芸用油

 町家に足を踏み入れたときに感じる、優しくも凛とした空気。それを「かっこいい」という表現するのは、わかる気がする。何と言っていいかわからないが、これはスゴイという気持ちが、「かっこいい」という言葉になるのだろう。そしてこれは、古い物の良さを直感的に理解する感受性が、今の日本人の中にも確実に受け継がれていることを意味する。改めて町家の良さ、大きさ、暖かさを実感した。

 (つづく)

山中油店
京都市上京区下立売通智恵光院西入508
電話:075-841-8537
営業時間:8時30分~17時 日、祝、第2・4土曜日定休
ホームページ:http://www.yoil.co.jp/

綾綺殿
京都市上京区浄福寺下立売上ル
電話:075-801-3125
営業時間:10時~18時、17時30分ラストオーダー、水、日、祝定休、18時以降は完全予約制で営業
ホームページ:http://www.ryokiden.com/
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